中国、Meta社のManus AI買収を阻止──20億ドル案件に待った
中国政府が初めて外国投資審査制度を発動し、米テック大手による中国系AI企業の買収を禁止。AI技術流出を防ぐ最も積極的な措置として注目される。

中国が買収取り消しを要求
中国の国家発展改革委員会は4月27日、Meta社による20億ドル規模のManus AI買収を阻止すると発表した。同委員会は法令に従い、関係者に買収取引の撤回を求めると述べた。 この決定は、重要な技術が米中技術戦争の激化の中で米国に流出する可能性への北京の懸念を反映している。2020年後半に導入された外国投資安全審査措置を中国が初めて使用したものと見られる。Meta社は買収額を公表していないが、20〜30億ドル規模と報じられ、Manus技術をMeta AIなどの製品に統合する計画だった。
Manusとは何か──注目の自律型AIエージェント
ManusはシンガポールのButterfly Effect社が開発した自律型AIエージェントで、大規模言語モデル(LLM)に基づいて独立した動作が可能。2025年3月6日に正式ローンチされた。 Manusは世界初の汎用AIエージェントと謳われ、AnthropicのClaude 3.5 SonnetやAlibabaのQwenの微調整版など複数のAIモデルを使用し、幅広いタスクを自律的に実行する。GAIA基準テストでは、基礎タスクで86.5%、中級タスクで70.1%、複雑タスクで57.7%の性能を示し、OpenAIのDeep Research システムを上回る結果を記録した。
POINT
北京の決定は、米中緊張の高まりの中で世界的な技術開発の二極化を強化し、AIや半導体などの重要分野における国境を越えた投資環境がますます困難になっていることを示している。
複雑な取り消し手続きと影響
実際の取り消しは複雑な作業となる。Meta社は12月の買収発表直後にManusを内部システムに統合し、スタートアップの幹部が米テック大手に参加している。すでにManusの従業員はMetaのAIチームに参加し、TencentやHongShan Capitalなどの投資家は取引から収益を得ている。 中国当局は買収の審査開始を迅速に発表し、スタートアップが依然として中国の人材と技術に依存していることを指摘した。Financial Timesによると、中国政府はManusの共同創業者2名の出国を禁止している。この決定は、データ、人材、知的財産の海外移転を検討している他のスタートアップへの警告とも捉えられている。
AITAKE編集部の見方
今回の中国による措置は、AI分野における米中対立の新たな段階を示すものだ。特に注目すべきは、中国が2020年に導入した外国投資審査制度を初めて本格発動した点である。これまでの米国による対中技術規制に対する「報復」の側面も強い。 Manus AIは自律型エージェント技術で世界をリードする存在だっただけに、この技術がMeta社の手に渡らないことは、同社のAI戦略にとって大きな痛手となる。一方で、実質的に統合が進んでいる状況での「取り消し」がどこまで実効性を持つかは疑問視される。 日本の企業にとっても、中国系AI企業への投資や買収を検討する際は、このような政治的リスクを十分考慮する必要がある。AI技術をめぐる地政学的な競争は今後ますます激化することが予想され、技術投資の意思決定においてリスク評価の重要性が高まっている。
Source: The Washington Post