マスク氏、自社AI「Grok」でOpenAIモデルを流用と法廷で証言
xAIがOpenAIのモデルを蒸留してGrokを訓練していたことを認める爆弾証言。1340億ドルの損害賠償と経営陣解任を求める裁判の第1週が終了。

マスク氏の3日間にわたる証言が注目を集める
カリフォルニア州オークランドの連邦裁判所で、世界一の富豪であるイーロン・マスク氏が3日間にわたって証言台に立ち、「慈善団体を盗むことはできない」と繰り返し主張した。マスク氏の証言は第1週の裁判の中心的な出来事となった。 マスク氏は2024年にOpenAI、サム・アルトマンCEO、グレッグ・ブロックマン社長を提訴し、非営利として設立されたAI企業が営利構造に転換することで創設時の約束を破ったと主張している。この裁判は、マスク氏が2015年にOpenAIに寄付した約3800万ドルが無断で商業目的に使用されたとして、最大1340億ドルの損害賠償を求めている。
xAIがOpenAIモデルを「蒸留」していたことを法廷で認める
最も衝撃的だったのは、マスク氏が自身のAI企業xAIがOpenAIのモデルを使って独自のチャットボット「Grok」を訓練していたことを認めた証言だった。法廷では観客からどよめきが起こった。マスク氏はxAIがOpenAIのモデルを「部分的に」蒸留していると述べた。 蒸留(ディスティレーション)とは、小規模なAIモデルが大規模で高性能なモデルの動作を模倣するよう訓練される技術で、より高速で安価に動作しながらほぼ同等の性能を発揮できる。この技術は、巨額のコンピューター・インフラへの投資によって構築された大手AI企業の優位性を脅かし、他のソフトウェア開発者が安価でほぼ同等の能力を持つモデルを作成することを可能にする。
POINT
マスク氏の証言は、米国のAI企業が互いのモデルを訓練に使用していることを公的に認めた初めてのケースとなり、業界全体に衝撃を与えている。
裁判の行方と業界への影響
イヴォンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事は裁判を2段階に分割した。まず5月21日までに責任の有無を判断し、その後に適切な救済措置を決定する。陪審の評決は諮問的なもので、最終的な決定は判事が行う。 この裁判の結果は、OpenAIが時価総額1兆ドル近くでのIPO計画を覆す可能性がある。一方、xAIは6月にもSpaceXの一部として1.75兆ドルの評価額での株式公開が予定されている。マスク氏は、xAIもOpenAIの技術を使って独自モデルを訓練する「蒸留」プロセスを使用していることを認めたが、その重要性は軽視した。また、アルトマン氏とブロックマン氏の解任と、同社の営利構造への転換の取り消しも求めている。
AITAKE編集部の見方
この裁判は単なる企業間の法的争いを超えて、AI業界の未来を左右する重要な意味を持つ。マスク氏によるモデル蒸留の証言は、業界の競争の実態を露呈し、知的財産保護の複雑さを浮き彫りにした。OpenAIが非営利から営利への転換を成功させれば、他のAI企業にも同様の構造変更への道筋を示すことになる。逆にマスク氏が勝訴すれば、AI企業の組織構造に大きな制約が課される可能性がある。この裁判の結果は、日本のAI企業にとっても組織運営や技術開発戦略の参考となる重要な判例となるだろう。特に、蒸留技術の法的地位や営利・非営利構造の選択において、今後の業界標準が決まる可能性が高い。
Source: CNBC